興行ビザとは
興行ビザとは

この記事は行政書士西田直之が作成しました。
興行ビザとは演芸、演劇、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動を行うための在留資格です。
興行ビザはショーに出演しないが興行を行う上で重要な役割を担う芸能活動(振付師、演出家等)や出演者の公演活動の補助者(マネージャー、照明係、トレーナー、サーカスの飼育係等)としての活動も興行ビザに該当します。
興行の形態以外の芸能活動も対象となる
- 商品又は事業の宣伝に係る活動
- 放送番組又は映画の製作に係る活動
- 商業用写真の撮影に係る活動
- 商業用のレコード、ビデオテープその他の記録媒体に録音又は録画を行う活動
これらの活動は興行以外の活動ですが興行ビザの在留資格に該当します。
その他、芸能活動を行うに当たってその存在が必要不可欠な者の活動も含まれます。例えば映画や商業用写真の撮影を行うカメラマン、商業用レコードの録音技師等が該当します。また、ファッションショーのデザイナーや映画監督等のような芸能人が居ない場合であっても独立して活動を行うことができる者も興行ビザに該当します。
在留期間
興行ビザの在留期間は15日、3ヶ月、6ヶ月、1年、3年です。海外アーティストが日本でライブ公演を行う場合等は15日や3ヶ月の短期の興行ビザを取得する場合が多く、プロ野球やプロサッカー選手等で長期滞在を要する場合には1年や3年の在留期間を取得します。
興行ビザは3種類に区別されています
興行ビザは3カテゴリー(1号~3号)に分類されており、それぞれ要件や必要な書類が異なります。
興行ビザ(基準1号)とは
興行ビザ1号はライブハウスやクラブ、飲食店等の比較的小規模から大規模なスタジアムでの演劇、演芸、歌謡、舞踏又は演奏の興行が該当します。施設や主催者によって更にイロハに区別されます。
令和5年8月より基準が緩和されており、基準1号イ及びロでは外国人の長期のライブツアーや小規模なライブハウス等での活動がこれまでよりも行いやすくなりました。
(新設)招へい機関に実績がある場合は大幅に要件緩和
申請人が次のいずれにも該当する本邦の公私の機関との契約に基づいて、「風俗営業法」第2条第1項第1号から第3号までに規定する営業を営む施設以外の施設において行われるものであること。
- 外国人の興行に係る業務について通算して三年以上の経験を有する経営者又は管理者がいること。
- 当該機関の経営者又は常勤の職員が人身取引、売春防止法等の罪により刑に処せられていないこと、暴力団関係者でないこと、外国人を入国させるために不正行為を行っていないこと等
- 過去三年間に締結した契約に基づいて興行の在留資格をもって在留する外国人に対して支払義務を負う報酬の全額を支払っていること。
- 前1~3各号以外に外国人の興行に係る業務を適正に遂行する能力を有するものであること。
基準1号イは申請人の実務経験や学歴が問われませんので人材の確保が容易になりますが、キャバクラやパブ、低照度飲食店、区画席飲食店等の風俗営業店は該当しません。
(旧2号)新たに受け入れをする場合であっても問題が生じるおそれが無い場合は緩和
基準1号ロはイよりも規模が大きいライブハウスや飲食店への招へいをすることが可能で、経営者や管理者に経験が無い場合であっても下記のいずれかに該当する場合は興行ビザに該当します。
- 我が国の国、地方公共団体の機関又は特殊法人が主催する演劇、演芸、歌謡、舞踊又は演奏の興行及び学校教育法に規定する学校、専修学校又は各種学校において行われるもの
- 文化交流に資する目的で、国、地方公共団体又は独立行政法人の援助を受けて設立された本邦の公私の機関が主催するもの
- 外国の情景又は文化を主題として観光客を招致するために、外国人による演劇、演芸、歌謡、舞踊又は演奏の興行を常時行っている敷地面積10万平方メートル以上の施設において行われるもの
- 客席において飲食物を有償で提供せず、かつ、客の接待をしない施設(営利を目的としない本邦の公私の機関が運営するも の又は客席部分の収容人員が100人以上であるものに限る。)において行われるもの
- 当該興行により得られる報酬の額(団体で行う場合は、当該団体が受ける総額)が1日につき50万円以上であり、かつ、30日を超えない期間本邦に在留して行われるもの
「客席部分の収容人員が百人以上である」とは
客席が設置されていないライブハウス等で、スタンディングで100人以上収容できる施設も認められます。
「客席において飲食物を有償で提供せず」とは
客席と一体性のある場所に設置されているバーカウンター等で飲食物を提供する場合であっても、客がバーカウンターにおいて飲食物を受け取り、自ら客席に運んで飲食する場合は、客席において飲食物を提供することには当たらないこととされます。
イ及びハのいずれにも該当しない場合には申請人、招へい人、施設について厳格な要件が課されます。
外国人側の要件
招へいされる外国人が下記のいずれかをクリアしている必要があります。
- 外国の教育機関でその活動に係る科目を2年以上の期間専攻
- 2年以上外国でその活動の実務経験
※その興行を行うことで得られる報酬の額が1日につき500万円以上の場合は上記の要件は適用されません。500万円以上の報酬を得られるということは相当の能力を有すると認められることにより学歴や実務経験が問われなくなります。
招へい機関の要件
日本の招へい機関が下記すべての要件をクリアしている必要があります。
- 外国人の興行に係る業務に通算して3年以上の経験を有する経営者又は管理者がいる。
- 5名以上の職員を常勤で雇用している。
- 当該機関の経営者又は常勤の職員が、人身取引を行っていない、売春防止法等の罪により刑に処せられていない、暴力団員でない等。
- 過去3年間に締結した申請人と日本の機関との契約に基づいて興行の在留資格をもって在留する外国人に対して支払い義務を負う報酬の全額を支払っている。(未払いの報酬が無い。)
- 外国人の興行に係る業務に通算して3年以上の経験を有する経営者又は管理者がいる。
- 5名以上の職員を常勤で雇用している。
- 当該機関の経営者又は常勤の職員が、人身取引を行っていない、売春防止法等の罪により刑に処せられていない、暴力団員でない等。
※ただし、主に外国の民族料理を提供する飲食店との契約で、月額20万円以上の報酬で、当該飲食店にて当該外国の民族音楽に関する歌謡、舞踊又は演奏などの活動に従事する場合は、これらの要件は課されません。
施設の要件
興行を行う施設について下記すべての要件をクリアしている必要があります。
- 不特定多数の客を対象に外国人の興行を行う施設である。
- 風営法 第2条 第1項 第1号に規定する営業を営む施設である場合は、専ら接客に従事する従業員を5名以上有し、興行ビザで活動する外国人が客の接待に従事するおそれがない。
- 13平方メートル以上の舞台がある。
- 9平方メートル(出演者が5名を超える場合は、9平方メートルに5名を超える人数の1名につき1.6平方メートルを加えた面積)以上の出演者用の控室がある。
- 施設の従業員が5人以上いる。
- 施設の経営者や常勤職員にも犯罪歴や暴力団関係がない。
興行ビザ(基準2号)とは
興行ビザ(基準2号)とは改正前の3号にあたる興行ビザで、演劇、演芸、歌謡、舞踊又は演奏の興行以外の興行(スポーツなど)に係る活動を行おうとする場合に該当します。
- プロスポーツ
- 格闘技
- サーカス
- ゲーム大会
- コンテスト
上記興行者への報酬が賞金であったり、スポンサーや興行収入から支払われる場合には基準2号に該当しますが、社会人実業団のスポーツチームで企業から給与・報酬として支払われている場合には興行ではなく特定活動のビザを取得します。
帯同者の在留資格に要注意
ショーや大会に出場しないが選手に同行するコーチやトレーナーも興行ビザに該当します。ところが、選手に同行する人員すべてが興行ビザに該当するというわけではなく、マーケティングスタッフ等は技術人文知識国際業務に該当します。このように活動内容によって在留資格が異なるため注意が必要です。
コーチやトレーナー等、指導者は技能ビザを取得することができますが下記の活動を行う場合には興行に該当します。
- プロスポーツ選手やプロチームと一体となって出場し、共に行動する場合
- 指導者自身も試合などの興行活動に出場する場合
興行ビザ(基準3号)とは
興行ビザ(基準2号)とは改正前の4号にあたる興行ビザで